シルクペインティングと友禅染は、基本的な技法は同じです。
どちらも、絵の輪郭に糊状の線を入れ、この線が色を挿す時の防波堤となります。
私はシルクペインティングを知るまでは、特に日本の友禅染やその他の染め物などにほとんど興味はなかったのですが、実際に体験してみたいと思い、何年か前、友禅染の本格的な教室で教えて頂きました。
上の写真はその時の作品です。
本物と同じ京友禅の工程、技法、素材で、一人でできる工程を体験しながら、最後にミニ着物に仕立ててくれます。
以下に、友禅染とシルクペインティングの共通点や違いを、私の体験を例にまとめました。
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友禅染の始まりは江戸時代 |

17世紀後半、江戸時代中期に扇絵師として活躍していた宮崎友禅斎が描く画風を、着物に取り入れて、模様を染めたことに始まり、この人が京友禅の創始者と言われています。
京友禅は、加賀友禅、東京友禅とともに、日本の3大友禅の一つで、華やかで、金銀箔や刺繍を使い、豪華絢爛な美しさが特徴です。
私が興味深いと思ったのは、加賀友禅のぼかしと虫食いという技法です。
加賀友禅のぼかしは模様の輪郭から中に向かってぼかしていくのに対して、京友禅は中から外へぼかします。
また虫食いは、虫食い跡のある葉っぱを模様に描くことが多く、加賀友禅は華美な装飾はせず染色のみで、写実的、絵画的なのが特徴です。
京友禅はその後、金沢や京都から移り住んだ職人たちによって、江戸でも大流行、江戸友禅が誕生します。
江戸友禅は、色数は少なめで控えめな絵柄が多く落ち着いた雰囲気が特徴で、京友禅とは対照的です。この大流行で、江戸の裕福な女性は友禅の着物を仕立て、おしゃれを競い合います。
それぞれの友禅染は、その土地によって違う特徴を持って発展していきましたが、明治時代には、染めに化学染料が使われるようになり、型染めという技法で大量生産が可能になります。
もう一つ、3大友禅と並ぶ沖縄の紅型(びんがた)があります。
これは型染めで作られる染め物で、起源はもっと古く、13~14世紀頃と言われています。
ずっと琉球王朝の保護のもとにあったのが、薩摩藩に支配されるようになってから、本土から友禅染が持ち込まれさらに技術が発展していきました。
沖縄の独特の風土が表れた、鮮やかな色彩と大胆な色使いで、一目で沖縄だとわかりますね。
工程は分業ではなく、全て一人で行います。
シルクペインティングの発展 |
日本では、中国と同じく9世紀ころからシルクに絵を描くことが始まっていて、最初は単色の絵だったそうです。
絵に色が加えられるようになったのは14世紀に顔料を使うようになってからです。
一方、インドでは、シルクにワックスを使って絵を描く技法が、西暦200年頃から存在していて、後にインドネシアなど東アジア、中国に広がっていき、16世紀から18世紀には大陸からヨーロッパを経て世界中に広がりました。
シルクに描くプロセスがヨーロッパに紹介されると、手描きのシルクは特にフランス人に非常に愛され、1920年頃から、現在使われているグッタという防波堤の役目をするゴム状の液体を使う技法が盛んになりました。
実際に、フランスでは本当にシルクペインティングが盛んで、画材を売るお店も至るところにあり、シルクペインティングはアートの一つのジャンルになっていると感じました。
日本では、この技法で日本独自の伝統工芸として発展したのですね。
今では、海外のシルクペインティングに携わる人たちに、大変興味を持たれています。
私たちにとっても、日本の伝統芸術を見直すという機会にもなります。
手描き友禅の主な工程 |
手描き友禅は、白いシルクから一枚の着物が完成するまでに、20以上の工程があり、それぞれの工程を専門の職人が熟練の技で進めていきます。以下は主な工程です。
1.下絵

構想を練って、下絵を作り、着物と同じサイズの紙にデザインを描きます。 その草稿を、着物の形に裁断した布の下に置き、つゆ草から取った青花で下絵を描きます。青花は水に接すると消えます。
教室では、用意された下絵から選んで始めます。私は牡丹の花の柄を選びました。
2.糸目

下絵に沿って、細い筒の中の糊を押し出しながら、線の上に防波堤の役目をする糊を置いていきます。
これって本当に熟練の技が必要ですね。線は均等に細い線を入れないといけないし、生地の厚みがあるからしっかり浸透させないと塗った時に色が流れてしまいます。
これはシルクペインティングでチューブのグッタを出しながら、色を塗った時に、隣の面に色が流れないように輪郭線に置いていくのと全く同じです。
厚みのないシルクでも、細い線をしっかり入れるのは、慣れるまで少し時間がかかります。
3.地入れ
滲みを防ぎ、生地に染料を浸み込みやすくするために、大豆から作った豆汁(ご、又はごじると読みます。)を生地に引きます。
この部分は、教室では専門の方にお任せします。
4.色挿し

糸目を引いた模様の中に色をつけていきます。この時、生地の下に、電熱器を置いて、染料を乾かしながら描いていきます。 染料を素早く乾燥させることで滲みを押さえて、生地の裏までしっかり通すためです。
これはシルクペインティングでは、薄い生地を使うので、すぐに乾きやすく、常に乾かさないようにしながら塗るので全く逆なのです。
この色挿しをやってみて、着物の生地は厚みがあるし、いつもの描き方と違うので最初は戸惑いました。
友禅では、一つ一つの模様の中を丁寧に埋めるように、ぼかしなどの技術やその加減など熟練の技とセンスで仕上げていく職人の技が必要です。
一枚の高価な着物を作るのですから、失敗はできないし、当然ですね。
実際に、着物になる厚みのある生地を前にすると緊張しました。
教室での体験はここまでで、次からの工程が終わって出来上がりを見るのが楽しみです!
5.伏せ糊
色挿しが終われば、その模様の部分に糊や蝋をかぶせて、次の工程で染まらないようにします。
6.地染め
大きな刷毛で地色を染めます。むらなく染める経験と技術が必要です。
地色で全く見た目の仕上がりが違うので、色を選ぶのは迷いますが、ミニ着物は私の大好きな鮮やかなブルーにしました。
7.蒸し
地染めの終わった生地を、蒸し箱に入れて、蒸します。
シルクペインティングでも、染料で描いた絵は、色止めのため、最後に蒸し器で蒸します。
8.水元
防染の糊と余分な染料を綺麗に洗い流します。友禅流しと言われ、以前は自然の川で行われていましたが、今は、人口の川で行われます。
水洗い後も、しわを伸ばしたり色々な作業で仕上げをして、ようやく一枚の友禅の着物が誕生します!
シルクペインティングで描いた絵は、同じく、洗うことで布に残っているグッタや染料を綺麗に取り除いたりすることがあります。
クマさんのミニ着物が完成!帯も本物の西陣織です。いろいろと着物に合わせるものを選ぶのは楽しいですね!
まとめ |
私の友禅染体験を通して、シルクペインティングとの共通点や違いを書きましたが、日本では、一般の人が友禅染に興味を持っても、その技法を体験したり、趣味にするにも場所が限られます。
京都を始め、各地にある観光客向けなどの教室で体験し、興味を持っても、これを趣味でやるということは難しいですね。
この伝統芸術としての技法は工程も多く、熟練した職人の手が必要です。でもそうだからこそ、日本独自の伝統工芸としての価値が認められています。
友禅染は日本の誇る芸術であり、シルクペインティングとは概念が違いますが、海外では趣味として楽しめるという方法が生まれ、広められていったのは素敵なことだと思います。
シルクペインティングの方は、今の日本ではまだポピュラーではないですが、シルクに絵を描くということが気軽にでき、またプロフェッショナルな域まで続けることの可能性もあるアートとして、一般に認知されるようになればいいなと、いつも思っています。
最後までお読みいただきありがとうございます。
ゼロから始めるシルクペインティング。















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